PROJECT STORY
大学図書館の設備設計
ー東京大学総合図書館ー
PROJECT STORY No.03
大学施設
- ウェルネス
- 光環境
- リノベーション/コンバージョン
Data物件データ
建物名称東京大学図書館団地(通称)
所在地東京都文京区本郷(東京大学本郷キャンパス構内)
主要用途大学施設(図書館)
延床面積41,767.36㎡
規模地下1階 地上11階(建物全体)
構造鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄筋コンクリート造・鉄骨造
工期2015年3月(Ⅰ期工事)
2017年1月(Ⅱ期工事)
2017年11月(Ⅲ-1期工事)
2018年3月(Ⅲ-2期工事)
2019年3月(Ⅲ-3期工事)
2021年1月(Ⅳ期工事)
建築主国立大学法人 東京大学
設計監修東京大学キャンパス計画室・同施設部
建築設計(有)香山建築研究所
構造設計(有)万建築設計事務所
設備設計(株)総合設備コンサルタント
建築施工(株)小松原工務店(Ⅰ期工事)
清水建設(株)(Ⅱ~Ⅳ期工事)
機械設備施工正和工業(株)(Ⅰ、Ⅲ-2期工事)
柿本商会(株)(Ⅱ、Ⅲ-1、Ⅲ-3、Ⅳ期工事)
電気設備施工栄光電気(株)(Ⅰ期工事)
藤井電機(株)(Ⅱ、Ⅲ-3、Ⅳ期工事)
(株)八重洲電業社(Ⅲ-1期工事)
工藤電機工業(株)(Ⅲ-2期工事)
東京大学総合図書館は当初1892年に落成した後、1923年の関東大震災で全壊、炎上し、貴重な蔵書も喪失した。再建資金の受贈を経て、1928年12月に本建物が完成、開館した。竣工後、増築を繰り返すことで他の研究科や研究所等を含む40,000㎡を超える広大な建物になっており、東京大学における「知」の中心にふさわしい歴史と威風を持つ建造物である。本プロジェクトは2014年の設計開始時から竣工まで足掛け8年に渡る設計協力を行ってきた案件である。工事目的は、創建時の復元、耐震性能の向上、設備機器の更新と省エネ化、図書館機能の変革対応、老朽部位の修復、バリアフリー対応を基本としている。
創建時の光環境を現代の技術で再現
創建当時の図書館を復元するという想いをベースに改修計画を行った。総合図書館4階では創建時の自然光によるトップライトをLED照明収容光幕天井にすることにより再現し、復元した。
創建当初の照明器具を復元
竣工当初の設計思想に回帰すべく照明を復元する方針とした。記念室及び閲覧室のシャンデリアは当時の製作図を基に鋳型を製作し、一からの製作となった。竣工当初は本体が真鍮(しんちゅう)製、グローブはガラス製、ランプは白熱灯であったが、ランプをLEDとし省エネにも寄与した復元照明となっている。また廊下は間接照明を多用し、天窓や壁面レリーフなどの意匠性を損なわないよう、かつ調和するように配慮した。
快適性・静粛性に配慮した床放射空調
3階閲覧室は、居住域での快適性・静粛性を高めるために床放射空調方式を採用した。床材に埋め込まれた架橋ポリエチレン管を用いた伝熱プレート+フィルムダクト方式を採用し、室内の温度差が均一となること、ドラフトを感じさせないことを重視した。床放射空調用の冷温水ヘッダーは、建具に隠すことで設備機器が視界に入らないように配慮した。
意匠性および環境性・省エネ性に配慮した空調設備
空調熱源として、環境性・省エネ性が良く、低負荷時に台数制御運転が可能であるモジュール型空冷ヒートポンプチラーを採用した。チラーは屋上に設置し、冷温水ヘッダーを介してポンプ台数制御、インバータによる変流量制御により、各空調機器への供給を行う計画とした。熱源方式の変更によりCOPは約1.1から約3.5に向上している。
中庭やドライエリアに散見された既存の空冷式パッケージ型エアコンの室外機は、マルチパッケージ型に変更した。室外機は可能な限り屋上設置とし、室内に配管ルートを確保することで外観に配慮した。また、換気設備の給排気口は、窓上部のアルミサッシをスリット状にし、意匠と調和するように考慮した。
Designer設計者
機械設備設計
設計・監理本部 第2設計・監理グループ
井口 勉Tsutomu Iguchi
文化財としての価値を損なうことなく、新たな設備を既存建物にどう融合させるかを問われました。創建時は、窓開けによる自然換気でしたので、梁と天井の制限がある中で、換気ダクトをどう納めるかに尽力しました。設備の存在を感じさせない、快適な空間を創造できたと自負しております。
機械設備設計
設計・監理本部 第1設計・監理グループ
浮田 祐哉Yuya Ukita
Ⅰ~Ⅳ期の設計すべてに携わらせていただきました。創建時の復元にあたり、設備をいかに意匠と調和させるかを考えながら、意匠・構造担当者と試行錯誤しながら計画することができ、貴重な経験を得る機会となりました。
電気設備設計
設計・監理本部 第3設計・監理グループ
山岸 玲Rei Yamagishi
創建時の歴史的背景を学び、その技術や先人の思いを継承し、さらにいかに次世代に伝えていくか。何を残し、何を変えなければならないか。文化財の復元というテーマで、設計から竣工まで、実に8年にわたる長期間のプロジェクトでした。非常に濃密で学びの多い経験になりました。
電気設備設計
設計・監理本部 第2設計・監理グループ
神垣 全芳Tomoka Kamigaki
本プロジェクトのような歴史的建築物の改修に携わらせて頂くにあたり、創建時の設計者をはじめ、全ての関係者が何を思いこのような設計にしたかについて思いを馳せながら設計をさせて頂きました。歴史的建築物の歴史を紡ぐものの1人として名を連ねることができ、この思いが後世に響けば設計者として嬉しく思います。