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PROJECT STORY

温泉設備の有効利用と排湯の熱利用

ー温泉ホテル 八幡屋 帰郷邸ー

第36回空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞

PROJECT STORY No.01

宿泊施設・共同住宅

  • リノベーション/コンバージョン
  • 未利用エネルギー/再生可能エネルギー

Data物件データ

建物名称母畑温泉 八幡屋 帰郷邸

所在地福島県石川郡石川町大字母畑

主要用途宿泊施設(温浴施設)、(食事処棟)

延床面積511.16㎡、2,043.93㎡

規模地下2階地上1階、地上3階

構造木造 一部鉄筋コンクリート造、鉄骨造 一部鉄筋コンクリート造

工期2018年5月~2019年6月

建築主(株)八幡屋

CMr(株)山下PMC

建築設計(株)倉橋建築計画事務所

設備設計(株)総合設備コンサルタント

建築施工前田建設工業(株)

機械設備施工大成温調(株)

電気設備施工(株)ユアテック

 本プロジェクトは、 福島県のほぼ中央に位置する里山に囲まれた大規模温泉ホテルの温浴施設(露天風呂・貸切風呂)増築において、源泉(45℃ 約400L/min)を様々な創意工夫により有効利用し、環境や省エネルギーに配慮した温浴設備を実現したものである。
 浴槽への源泉直接供給、排湯熱回収による給湯予熱、源泉による露天風呂の歩廊床暖房、急斜面の温泉パイプ施工などを実施している。

露天風呂への源泉供給設備

 露天風呂5系統と、貸切風呂2系統の、ろ過昇温システムを設けている。これらの浴槽への源泉供給は、約2km離れた源泉井戸からポンプアップした源泉を、源泉槽を介さずに直接各浴槽に落とし込んでいる。一般的なシステムは、源泉槽にいったん貯湯した後に、各浴槽に供給するが、本施設では直接供給することにより、搬送動力を節減している。

源泉供給・ろ過昇温・排湯系統図

排湯熱回収による給湯予熱システム

 湯屋カラン・シャワー用の給湯貯湯槽への補給水を排湯回収熱により予熱して、省エネルギーを図った。浴槽のオーバーフローを排湯槽に導き、プレート式熱交換器により排湯熱回収している。2基ある貯湯槽の1基を常時予熱槽として活用するため、排湯槽からの循環温水の利用可否を水温により簡易に判定する制御を導入することで、貯湯槽への補給水を排湯温度近くまで昇温している。

温水ボイラ・貯湯槽・排湯槽熱回収系統図

排湯の熱回収制御系統図

露天風呂への歩廊床暖房設備

 露天風呂への歩廊床暖房に架橋ポリエチレン管を敷設し、冬期に源泉を直接パイプに供給し床暖房を行っている。排湯利用システムを構築した場合、熱交換器、ポンプ、制御機器などメンテナンス対象が増え、ランニングコストも増すため、比較検討の結果、源泉を直接利用する方式とした。

床暖房敷設図

床暖房サーモグラフィー

温泉パイプの施工

露天風呂5系統のろ過昇温パイプは急斜面を通過するが、軟弱な地盤への施工となるため、急斜面の上下にコンクリート基礎を設け、渡したワイヤーを懸架し、温泉パイプ(架橋ポリエチレン管+断熱材+保護管)を保持する施工方法を採用した。

傾斜地に設置されたろ過昇温パイプ

排湯の直接利用

 融雪対策、路面清掃などへの排湯利用のため、露天風呂の排湯の一部をパイプでサービスロード付近まで導き排湯融雪栓を設けている。融雪後の排湯は河川に流れるが、試験桝にて水質検査を行い、排水基準内であることを監視している。

Designer設計者

機械設備設計

設計・監理本部 第2設計・監理グループ

井口 勉Tsutomu Iguchi

 温泉地の温浴施設では、豊かな源泉を露天風呂や源泉かけ流しで楽しむことが醍醐味ではありますが、今後カーボンニュートラルな社会の実現を目指す上で、温泉の醍醐味を損なうことなく源泉の持つ熱エネルギーを有効利用し、省エネルギーに配慮した温浴施設を整備していくことは設備設計者の社会的使命と考えられます。

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