PROJECT STORY
くじゅう管理官事務所のZEB設計
ーくじゅう管理官事務所ー
PROJECT STORY No.07
事務所・庁舎
- ZEB
- 未利用エネルギー/再生可能エネルギー
Data物件データ
建物名称環境省九州地方環境事務所くじゅう管理官事務所
所在地大分県玖珠郡九重町
主要用途事務所
延床面積115.51㎡
規模地上1階
構造木造
工期2022年12月 ~ 2024年1月
建築主環境省九州地方環境事務所
建築設計リコークリエイティブサービス(株)
設備設計(株)総合設備コンサルタント
本プロジェクトは、環境省九州地方環境事務所 くじゅう管理官事務所の新築に係る設計業務である。阿蘇くじゅう国立公園内に位置するくじゅう管理官事務所は、国立公園の保護、管理を目的とする事務所である。2050年脱炭素社会実現に向け、2021年6月9日に地域脱炭素ロードマップが公表され、公共施設についてはネット・ゼロ・エネルギー・ビルを率先して実施することとされている。このような状況を踏まえ、本業務では、建設予定地の立地環境や施設規模等から当該施設の100%『ZEB』の実現を目的とする設計を行った。
設計コンセプト
本建物は、『環境に配慮したZEB 建築』と『くじゅうの自然と調和』の実現に向けて省エネルギー建築でありながら、当該敷地の厳しい自然環境に配慮しつつ自然環境との調和を両立させた計画としている。建築での省エネルギー手法には、「外皮性能の向上」として外皮に高性能グラスウールやアルゴンガス入りLow-E複層ガラスを採用し、断熱性強化による外皮性能の向上を図ると共に建物基礎部分の断熱は外断熱を採用し、足元の底冷え軽減を図っている。すきま風防止のため「気密性の確保」として外壁、天井面に室内側に防湿気密シートを敷設し、気密試験の実施で施工の確実性を確認する計画とした。また、「環境負荷の低減と自然エネルギーの活用」として自然採光を十分に取り込むことで、照明設備の使用の低減を図ると共に、屋根や庇により直射日光の入射を減らし、空調負荷低減を図っている。
省エネ計算及び評価結果
本業務ではBELS申請を行う際に「モデル建物法」による省エネ計算を行っているが、同じ条件による「標準入力法」の計算ではBEIの数値がどの様な結果になるか比較を行った。
「モデル建物法」による計算を行った評価結果では、BEIm = 0.00 となった。これにより BEIm ≦ 1.0を満たし、省エネ基準達成と共に BEIm ≦ 0.00 となり『ZEB』を達成した。
「標準入力法」による計算を行った評価結果では、BEI = -0.35 となりモデル建物法を上回り『ZEB』を達成した。
BPI(外皮性能)は、評価する室用途の設定に限りがある「モデル建物法」に対して、「標準入力法」は評価対象建築物すべての部屋の詳細な情報による評価を行うことで、数値として悪くなっているが、一次エネルギー消費量は「標準入力法」で設備機器毎の効率や消費電力など詳細な情報を取込む方法で評価することにより BEI = 0.29 となり、「モデル建物法」の BEIm = 0.49 に対して削減率が良くなっていることがわかる。
建物規模により比較結果に違いが出てくることはあるが、今回の建物では前述した通り、「標準入力法」の方が良い結果となった。
Designer設計者
機械設備設計
九州事務所 設計・監理部
早川 大輔Daisuke Hayakawa
本業務では、くじゅう管理官事務所の新築基本・実施設計で阿蘇くじゅう国立公園の自然との調和及び『ZEB』取得までのプロセスを理解しながら業務に携わることができました。今後、更なるZEB 取得を目指した省エネに配慮した設計が増えてくることは間違いなく、『ZEB』を達成するために行った標準入力法とモデル建物法での計算結果にどのような違いが現れるかを検証する事ができたことで、今後の設計を行う上で考え方の手法を広げる事につながると考えます。
電気設備設計
九州事務所 設計・監理部
久保田 淳司Atsushi Kubota
今回の設計における目標は環境省が目指す『脱炭素社会の実現』のために最適な省エネ提案を行いエネルギー消費がネットでゼロとなる『ZEB』を実現すること、建物建設場所は標高1000m以上に位置するため真冬の厳しい寒さにも耐えつつ自然環境にも配慮し『くじゅうの自然環境との調和』を目指すこと、以上の2点を両立させる事でした。建物の周辺環境を考慮し色々な角度から計画を行う事の大切さを考える設計となりました。