PROJECT STORY
博物館の設備設計
ー土浦市立博物館ー
PROJECT STORY No.11
文化交流施設
- リノベーション/コンバージョン

Data物件データ
建物名称土浦市立博物館
所在地茨城県土浦市
主要用途博物館
延床面積2,482㎡
規模地上3階・地下1階
構造鉄筋コンクリート造
工期2022年10月~2023年9月
建築主土浦市
建築設計(株)相互設計事務所(協力)
設備設計(株)総合設備コンサルタント
建築施工(株)山本工務店
機械設備施工ファシリオ・東プラ特定建設工事共同企業体
電気設備施工吉原電機工業(株)
土浦市立博物館は、土浦市が所有する国宝・重要文化財を収蔵、展示する博物館として、文化庁から日本全国でも数少ない「公開承認施設」として認定されている施設である(1995年承認 第91号) 。 1988年に土浦城二の丸跡に建設され、城郭をイメージした外観となっている。竣工から34年が経過し、機械設備については今回が初めての大規模な改修工事となり、既存空調設備の故障・老朽化に伴う改修を主目的とし、併せて照明設備のLED化、自家発電機新設等を行った。
[注釈]
公開承認施設
文化財保護法(第53条)に基づき、国宝や重要文化財などが適切な施設で公開されることを目的とした制度。全国で110館が認定を受けている。(2024年6月1日時点)
発電機設備
災害等による停電時のBCP対応として100kVAの自家発電設備を新たに設置した。対象負荷は、国宝・重要文化財を収蔵している収蔵庫の空調機、雑排水ポンプ、事務室等の照明、コンセントとし、発電機を屋上に設置することで浸水対策に配慮した。
単相電源取得のため、屋上の動力制御盤内に、スコットトランス(20kVA)を設置した。
発電機仕様
形 式:キュービクル式
電気方式:三相3線式200V 50Hz
定格出力:100kVA
電 動 機:ディーゼル機関(使用燃料:軽油)
始動時間:40秒以内
稼働時間:約8時間程度


発電機
照明設備
省エネルギー対策として、館内照明を全てLED照明とした。LED照明は、紫外線の発生が極端に少なく、展示物への影響が小さいため、展示ケース用の照明器具にも採用し、調光調色可能な器具を選定することにより、展示物に合わせた光環境確保に配慮した。


展示ケース
空気調和設備
エントランスホール・展示室・収蔵庫系統は、既設の空調方式を踏襲したエアハンドリングユニット方式とし、その他事務諸室系統は、既設のファンコイルユニットから空冷パッケージ形空調機に変更した。空調熱源は、劣化による漏水が頻発していた既設氷蓄熱式空冷ヒートポンプチラーから、年間を通じて冷水・温水の供給が可能な空冷ヒートポンプモジュールチラーに変更した。
エントランスホール・展示室等の施設運営時のみ稼働する系統は、4管式のエアハンドリングユニットとし、冷暖房同時運転可能な方式とした。空調熱源は、モジュール形空冷ヒートポンプチラー3台(冷房専用1台・冷暖切替1台・暖房専用1台)とし、冷暖房の需要に応じて冷暖切替機の切替えを可能とする構成とした。
湿度制御の精度が求められる展示室系統は、冬期は電熱式蒸気加湿器による加湿、夏期は冷水・温水コイルによる除湿再熱とした。
天井の高いエントランスホールには、主に冬期の上下温度差解消を目的として天井部に循環ファンを新設した。なお、意匠性を考慮して、循環ファンは天井照明装飾用ルーバーの内部に設置した。
美術工芸品などの収蔵品を保管する収蔵庫は、24時間空調を必要とするため単独系統とし、冷専空冷チラーとエアハンドリングユニットの更新を行った。温湿度制御の精度が求められるため、加湿は電熱式蒸気加湿とし、除湿制御は冷水コイルによる過冷却+電気ヒータによる再熱運転とした。


空調配管系統図
循環ファン
Designer設計者

機械設備設計
設計・監理本部 第2設計・監理グループ
戸鹿野 圭Kei Togano
博物館の改修設計ということで、来場者や職員の方の快適性だけではなく、収蔵品の保管・展示の面についても配慮した設計に留意しました。今回の改修工事が今後の土浦の歴史・文化教育の発展に貢献できれば嬉しく思います。

電気設備設計
設計・監理本部 第1設計・監理グループ
原 康輔Kosuke Hara
公開承認施設である博物館の改修に携わらせていただけたことに感謝いたします。BCP対応として発電機を設置し、収蔵品の継続保管についても配慮しました。また、全館LEDにすることで室内環境の改善にも貢献できたと思っております。今回の改修工事によって多くの方が訪問される機会となれば幸いです。ご協力いただいた全ての方に感謝申し上げます。