PROJECT STORY
大学研究実験棟の設備設計
ー東京工業大学大岡山西5号館・大岡山西6号館ー
PROJECT STORY No.13
研究実験施設
- 光環境
- 未利用エネルギー/再生可能エネルギー

Data物件データ
建物名称大岡山西5号館、 大岡山西6号館
所在地東京都目黒区(東京工業大学大岡山キャンパス構内)
主要用途大学施設
延床面積8,161㎡、4,532㎡
規模地下1階~地上5階、地下1階~地上4階
構造鉄骨造、鉄筋コンクリート造
工期設計:2020年3月~2022年3月
工事:2022年4月~2023年8月
建築主国立大学法人 東京工業大学
設計デザインアーキテクト
西5号館:那須聖研究室
西6号館:塩崎太伸研究室
構造:竹内徹研究室
デザイン総合監修:安田幸一研究室
東京工業大学施設運営部
建築・構造設計(株)久米設計
設備設計(株)総合設備コンサルタント
建築施工(株)フジタ
機械設備施工三建設備工業(株)
電気設備施工栗原工業(株)
監理東京工業大学施設運営部
本プロジェクトは東京工業大学のキャンパスにおける建築学系と土木・環境工学系の移転に伴い計画されたものであり、2棟とも建築系・土木系の研究室、実験用途の大学施設で、大岡山キャンパス内の中心部に位置している。
建物そのものが、建築面、構造面、設備面で学生に対する生きた教材として機能するよう計画されている。共通の特徴として、各諸室は天井を貼らず、天井内部の設備を見えるようにし、建築素材もその特徴が分かるように極力露出仕上げとして、土木・環境工学系・建築学系の学生の教育に資する設計としている。
受変電設備
受電方式は、特高受電所より、西6号館建物3階電気室に三相4線6.6kVで受電しており、き電盤を介し西5号館1階電気室へ送電している。西5号館からはキャンパス内の別建物を経由し特高変電所へと至るループ方式を採用しており、高圧ケーブルは耐水トリー性を高めるため三層同時押出ケーブルを採用した。
2棟とも、建物用途が実験施設であることから、将来の実験負荷増のために変圧器増設スペースを見込み、高圧部はキュービクル方式、変圧器部は増設が容易なオープン式で計画した。
照明計画
建物内は一部の室を除き天井を張らず、仮想天井高さをFL+2,500mm~FL+3,000mmのラインで設定し、空調機器や照明器具の仕上面を合わせた。西5号館の4階製図室は、設計照度を750lxとし、ヴォールト屋根の曲面天井に対して垂直にダウンライトを配し、連続性のある天井面に対して意匠に配慮した配置計画とした。


研究室
西5号館4階製図室
実験系電源
研究室や実験室には実験用電源盤を設け、研究室ごとに実験用の電源を電源ダクトにより単相電源、三相電源の双方を供給できる仕様とした。
太陽光発電設備
西6号館の屋上に、50kw相当の太陽光発電設備を設置した。
意匠的に極力建物側面から屋上突起物を見せないよう、また雷保護設備の保護角内に入れる必要から、設置角度は5度とし、パラペット上端より太陽光発電設備の上端が突出しないように計画した。また低角度設置のため、基礎が不要な防水一体型工法を採用した。
太陽光電力は系統連系で西6号館の電気室に接続され、全て自家消費としている。


西6号館 屋上太陽光発電設備
空調・換気設備
広い空間を有する研究室、実験室などは、ビル用マルチパッケージ形空気調和機、教員室、サーバー室等は将来の自由度と故障時の他室への影響を考慮し、シングル形エアコンとした。居室換気は、全熱交換器とし、トイレ、シャワーブース、倉庫等は、第3種換気方式とした。
西5号館の最上階に位置する4階製図室は、ヴォールト屋根に面しており、天井高さが高い部分や低い部分があり均一ではないため、天井吹出方式は採用せず、ビル用マルチパッケージ形空気調和機(下吹出形)による床吹出+天井裏還気の空調システムを採用した。
屋外機とベントキャップ、ガラリは、線路と反対側の設備スペースに集約し、スパンドレルの目隠しにより意匠上配慮するとともに、メンテナンスの容易性と、学生への生きた教材としての役割を果たしている。
実験工場は、天井高9~10mの大空間のため、非空調とした。給気用有圧扇と排気用有圧扇を組み合わせた第1種換気方式とし、換気回数は3~5回/hとした。
西6号館廃液保管庫の一般排気は、15回/hの3,400㎥/hを確保した。低い位置に滞留するガス対策として、600㎥/hの排気ダクトを溜めますまで延長した。
廃液の詰め替え作業時は、フード面風速1.0m/sを確保し、6,850㎥/hの処理風量とした。2階バルコニーのスクラバーで処理した後に、大気開放している。


西6号館廃液保管庫 換気系統図
西6号館 RC 実験工場の換気
給水設備
上水・雑用水は、西5号館に受水槽・加圧給水ポンプを設け、西5号館と西6号館に供給している。
西5号館と西6号館の間には構内道路が通っており、上水・雑用水・消火・ガスは、構内道路をまたぐブリッジにより西5号館から西6号館に導いている。
災害時や断水時等の対策(BCP対策)として、西5号館の5階機械室に雑用水用の高置水槽を設け、2階トイレのみに供給した。
雑用水は西5号館に雨水ろ過装置(砂ろ過)を設け、トイレの洗浄水に利用した。


給水系統図
Designer設計者

機械設備設計
環境・エネルギーソリューション部
井口 勉Tsutomu Iguchi
コロナ禍での設計、施工は、関係者同士の顔がよく見えない、未経験の作業となりました。
そのような状況ではありましたが、ユーザーの意図する内容を理解し、要求性能を満足する建築物ができたと考えております。

電気設備設計
設計・監理本部 第3設計・監理グループ
山岸 玲Rei Yamagishi
設計期間から施工期間はコロナ禍のただ中で、WEB会議等新しい進め方で設計を行いました。
建築系、土木系の生徒が使う大学施設として、次世代の建設業界を牽引していくであろう学生の一助となる、生きた教材としての建築物が出来たと考えております。

機械設備設計
札幌事務所
吉岡 幹夫Mikio Yoshioka
大学施設部・各研究室・建築設計の皆様とWEB会議での打合わせとなりましたが、コミュニケーションを取りながら設計を進められたと考えております。
本施設がキャンパスのシンボルとなることを期待しております。

電気設備設計
設計・監理本部 第2設計・監理グループ
小倉 利公Toshiaki Ogura
建築系・土木系の施設となり、ヒアリングや現地での実験装置の調査も行い、特殊な電圧が必要となる大型実験装置にも対応可能な変電設備の計画を行いました。
研究実験の用途以外に特徴的な天井のない仮想天井の仕上げなど学生方への教材としての役割にも期待しております。